写真の上のカーソルがの場合はクリックすると拡大します。

日本で皆既月食と惑星食が同時に見れるのは、1580年7月26日にあった皆既月食と土星食なので一生に1回見ることさえ難しい非常に珍しいことであることは知っていましたが、天王星は非常に遠い惑星で見つけるのは難しく、自分のカメラでは撮るのも難しいと思っていて写真を撮るつもりはありませんでした。ところが、夕食を食べ終わった後にテレビで録画してあった午後7時のニュースで皆既月食と天王星食をやっていたので、急に見たくなって、急いで2階のバルコニーに上がって空を見上げると、皆既月食だったのです。ダメもとで写真を撮ることにしました。流石にコンパクトカメラでは天王星を撮るのは難しいと思い、長く使っていない一眼レフを出してきてセットして撮ったのが上の写真です。撮った時刻は19時58分38秒でした。撮っていると時は月の周囲には星が見えなかったのですが、撮った写真を確認するといくつか星が写っていました。

ネットでいろんな写真と見比べてみた結果、月の左下の星が天王星であることが分かりました。問題は右の写真の天王星が月食の月の裏側に入るところが撮れているかどうかでした。三脚は華奢(きゃしゃ)でセルフタイマーを使って撮っても、かなりブレていて、いい写真は少なかったのです。それに長くカメラを使っていなかったので、すぐに電池が切れてしまいました。さらに予備の電池も充電量が少なくなっていて21時05分21秒までしか撮りませんでした。天王星食が起こる時刻の情報なしで撮り始めたので、後で調べるまでは、天王星および天王星食が撮れているかどうかは判りませんでした。
太陽系第7惑星の天王星の一番の特徴は右の写真のように自転軸が公転面に対して横倒しになていることと、平らな円盤状(リング状)の環があることです。


下の大きな写真は天王星食になる寸前で、20時37分04秒に撮りました。この後も撮り続けていたので、撮った写真を見ていくと、幸運なことに右の2秒ごとに画面が変わる連続写真のように天王星食となり完全に見えなくなるまで撮られていました。つまり天王星食になる瞬間を撮るという目的は達成できたわけです。右の小さな連続写真はここから14枚目の大きな画面で紹介します。


上の写真は、こちらの写真を黄色の枠の部分でトリミングしたものです。焦点距離400mmで撮っても月がこの大きさなので天王星は写らないと思っていました。天王星は月までの距離の約7080倍(=(2,870,990,000km-149,597,871km)÷384,400km)の距離にある惑星なのです。


それでは19時58分38秒から天王星(Uranus)が見えなくなるまでの写真で、比較的見るに耐えられる写真を順番に紹介します。こちらが19時58分38秒に撮った写真です。月を撮り終わった後に、同じカメラでデジタル時計を撮って写真に記憶されている時刻との差を修正しているので書き込んでいる時刻の誤差は1秒以内です。こちらの撮影条件はISO3200 F5.6 2.5secです。


20時22分53秒です。いずれの写真も少しピントがずれているか、ブレているので星が実際よりは少し大きく写っているようです。ここから20時45分34秒の写真までの撮影条件はISO3200 F5.6 0.8secです。天王星は遠くにある惑星のため小さく見えますが直径は地球の4倍(=51118km÷12756km)もあります。体積では64倍になります。


20時27分14秒です。上の写真から4分11秒ですが、月に近づいているのが分かります。


20時28分40秒です。まだ月までは距離があります。


20時37分04秒です。かなり近づきました。


20時39分12秒です。
この前後の写真は画質は良くないのですが、月の裏に天王星が隠れるところなので、掲載させてもらっています。


20時41秒27秒です。すでに天王星食は始まっているようです。若干、天王星の一部が見えます。国立天文台の資料によれば東京での天王星の潜入開始は20時40分53秒で、仙台では20時44分24秒だそうです。天王星食の時刻は場所によって違いますが、月食は月面上の地球の影なので、地球上のどこから見ても時刻は同じです。ネットでの動画→潜入開始 出現開始
     天王星潜入   天王星出現   皆既月食開始  皆既月食終了
 札幌 20時49分04秒~21時47分22秒  19時16.3分 ~ 20時42.0分
 仙台 20時44分24秒~21時31分50秒  19時16.3分 ~ 20時42.0分
 東京 20時40分53秒~21時22分20秒  19時16.3分 ~ 20時42.0分
 京都 20時31分53秒~21時21分18秒  19時16.3分 ~ 20時42.0分
 福岡 20時22分12秒~21時16分51秒  19時16.3分 ~ 20時42.0分
 那覇 20時13分12秒~20時54分08秒  19時16.3分 ~ 20時42.0分


20時41分45秒です。ほとんど天王星は見えませんが。クリックして拡大写真を出してもらうと、痕跡が分かると思います。個の写真と上の写真が天王星食の部分食の状態なのかもしれません。
天王星は遠い惑星のため、光の届く時間を考えると、見えていた天王星食は約2時間31分前の位置で、月の位置は1.28秒前だったのです。それを考えると星を見るということは過去を見ているのだという不思議なロマンを感じます。
今回の天王星食の時の各星の距離に関してはネットで探しきれなかったので、月までの距離は月の平均公転半径(38万4400km)を使い、天王星までの距離は天王星の平均公転半径(287099万km)から地球の平均公転半径(14960万km)を引いた数値を使っています。
 光の速度     29万9792.458km/秒
 月までの距離   38万4400km 1.28光秒    
 天王星までの距離 272139万km 9078光秒 ( 9078秒=2時間31分18秒)


20時42分37秒には完全に天王星は見えなくなりました。写真に天王星食が写るかどうかが分からなかったので、残り少なくなった電池で満遍なく(まんべんなく)91枚の月食の写真を撮ったのが良かったです。


連続写真で1枚目の19時58分38秒から2枚目の20時22分53秒の写真まで時間が開いてしまったのは、その間の写真は、この写真のようにピントがボケてしまったためでした。この写真は20時05分58秒に撮った写真です。


ピントがボケると、この写真のように天王星は、実際よりかなり大きな丸に写ります。ピントが合っていると小さな丸(or 点)です。ボケていると天王星の青色が際立っているように感じます。


上の9枚の連続写真とボケた写真なども追加して計13枚を2秒ごとに表示するGIFアニメーションをつくりました。19時58分38秒から天王星が月に隠れて見えなくなる瞬間の20時42分37秒までです。次に日本で皆既月食中に惑星食が見られるのは322年後の2344年7月26日の土星食だそうです。それほど貴重な経験だったわけです。撮った写真で後から皆既月食中の惑星食(天王星食)だったことが分かったわけですが、2階のバルコニーに上がって直接見た(双眼鏡でも見た)と人には言えるので、数百年に一度の、すごい経験したことになりました。日本で皆既月食と惑星食が重なるのは数百年に1度ですが、天王星食に限れば読売新聞オンラインには「国立天文台によると、日本で皆既月食と天王星食が重なるのは過去5000年間で一度もなく、極めてまれな現象」と書かれていました。


皆既月食が終わり部分月食になり始めました。20時45分34秒の写真です。確かに皆既月食中に惑星食(天王星食)になりましたが、そのあとすぐに部分月食になったことから皆既月食中の惑星食は時間的に短かったことになります。日本では皆既月食中の天王星食の時間は沖縄が最も長かったことになるようです。


更に29秒進みました。露出を変えて撮りました。20時46分03秒の写真です。撮影条件はISO6400 F11 1/3secです。


かなり日があたる部分が増えてきました。20時59分54秒の写真です。撮影条件はこちらもISO6400 F11 1/3secです。皆既月食に関しては2014年10月8日の皆既月食を撮影して記事に書いたことはありました。→ポチッ


今回の皆既月食では一部の時間帯しか写真が撮れなかったので、月食の変化を判りやすくするために2014年10月8日に撮った皆既月食の16枚の写真(-65分~+75分)を並べてみました。写真をクリックすると拡大写真を表示します。