キンランの森 [植物]
写真の上のカーソルがの場合はクリックすると拡大します。
先日、野生のクマガイソウ(熊谷草)の咲いている山を紹介しましたが、その山には今までに見たことのないほどの数のキンラン(金蘭)が咲いている森だったのです。
目立たない小さなラン(蘭)なので写真で、その数の多さを実感してもらうのは難しいけれども出来る限り紹介したいと思います。この写真のように広い範囲に点々とキンランが咲いていました。写真をクリックしてもらうと拡大するので沢山のキンランの花が確認できると思います。ここだけでなく山全体、森全体にキンランが咲いていました。
残念なことですがキンランも盗掘されている形跡かありました。ただしクマガイソウほどの被害ではない上に目印や柵などの保護が行われ始めたようなので、是非とも、この群生した景観を後世に引き継いでもらいたいと思います。
大きな株が密集して咲いているところもありました。
キンランは人工栽培はきわめて難しい植物です。
多くのラン科植物の共生している菌根菌はリゾクトニアなどの、落ち葉や倒木などを栄養源にして独立生活している腐生菌です。 ところがキンランが依存している菌は腐生菌ではなく、樹木の根に外菌根を形成する樹木共生菌です。そのような外菌根の菌は炭素源を共生相手の樹木から供給されているため、その生存には特定種の樹木が必要不可欠で、その菌から栄養分を吸収しているキンランは、樹木の作った栄養を、菌を通じて間接的に摂取しながら生きているために、蘭のなかでも、きわめて人工栽培が難しい植物であることから、キンランを見つけても採取せずに自生している場所で鑑賞してほしいのです。
さらに大きな株が密集して咲いているところもありました。私の家の近所の雑木林にもキンランが咲きますが、これほど立派なキンランは見たことがありませんでした。
沢山の花を付けたキンランを見つけました。これほどの数の花を付けた株を見たのは初めてでした。それも3株が密集して咲いているのは圧巻でした。周囲が明るくなると、このようにキンランは花を広げます。暗くなると花を窄めて半開き状態になります。
見事に群生したキンランも見つけました。これほどの大きな群生を見たのは初めてでした。キンランはクマガイソウと同じラン科の植物です。元々、日本では、ありふれた和ランの一種でしたが、1990年代ころから急激に数を減らし、1997年に環境省レッドリストの絶滅危惧II類(VU)にしていされました。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida
目 : ラン目 Orchidales
科 : ラン科 Orchidaceae
属 : キンラン属 Cephalanthera
種 : キンラン Cephalanthera falcata (Thunb.) Blume
同じ森の中に咲いていた花たちをいくつか紹介いたします。
ラン科のエビネ(海老根)も、このように咲いていました。野生のエビネを見たのは久しぶりでした。エビネは園芸種として沢山栽培されていますが野生のエビネは少なくなっています。そのため環境省のレッドリストの準絶滅危惧(NT)に指定されています。総個体数は全国で約20,000、平均減少率は約60%だそうです。減少の主要因は、園芸用の採集、森林の伐採、土地造成であると推定されています。また多くの都道府県のレッドリストでは絶滅寸前(CR)・絶滅危惧種(EN)・危急種(VU)・準絶滅危惧(NT)の種に指定されています。このことからも、このエビネが非常に貴重であることが判ってもらえると思います。最近は園芸種が広まっていることから相対的に原種エビネの園芸需要が減って盗掘も少なくなっているそうです。減少率60%の定義は10年間で60%減少することです。つまり10年前の40%の数になるほどの減少率なのです。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida
目 : ラン目 Orchidales
科 : ラン科 Orchidaceae
属 : エビネ属 Calanthe
種 : エビネ Calanthe discolor
こちらもラン科です。すでに紹介したたクマガイソウ(熊谷草)です。ここは貴重な野生植物の咲いている貴重な森でした。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida
目 : ラン目 Orchidales
科 : ラン科 Orchidaceae
属 : アツモリソウ属 Cypripedium
種 : クマガイソウ Cypripedium japonicum
小さなギンラン(銀蘭)も見つけました。キンランが沢山咲いている割にはギンランは少なかったです。以前にもギンランの記事を書きました。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida
目 : ラン目 Orchidales
科 : ラン科 Orchidaceae
属 : キンラン属 Cephalanthera
種 : ギンラン Cephalanthera erecta (Thunb.) Blume
マムシグサやウラシマソウも沢山咲いていました。
こちらはマムシグサまたはアオマムシグサです。ここで紹介した以外にイカリソウやヤマユリもありました。その他にも沢山の貴重な野草が生育しているようでした。
門 : 被子植物門 Magnoliophyta
綱 : 単子葉植物綱 Liliopsida
目 : サトイモ目 Arales
科 : サトイモ科 Araceae
属 : テンナンショウ属 Arisaema
種 : マムシグサ Arisaema serratum
レッドデータブックカテゴリー
1997年に発表された環境省レッドデータブックで採用されているカテゴリーと定義を枠内に記載します。
キンラン VU
エビネ NT
クマガイソウ VU
EX 絶滅 (Extinct)下記の区分は環境省のレッドブックが参考にしているIUCN(国際自然保護連合 International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)の基準(2001,ver.3.1)の減少数と個体数の関係を示したものです。あくまでも参考です。定性的な正確な調査をしている間に絶滅してしまう笑えない話になってはいけないので、確実な情報がある場合や情報が少ない場合などで柔軟に決めているようです。特に情報が少ないものは安全サイドの判断がなされているようです。本IUCNの基準の区分は福島県内の絶滅危惧種のモニタリング報告会調査結果に参考に添付されていたものを引用させていただきました。
日本では既に絶滅したと考えられる種
EW 野生絶滅 (Extinct in the Wild)
飼育・栽培下でのみ存続している種
CR 絶滅危惧IA類 (Critically Endangered)
ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
EN 絶滅危惧IB類 (Endangered)
IA類ほどではないが、近い将来に野生での絶滅の危険性が高いもの
VU 絶滅危惧II類 (Vulnerable)
絶滅の危険が増大している種
NT 準絶滅危惧 (Near Threatened)
存続基盤が脆弱な種
DD 情報不足 (Data Deficient)
評価するだけの情報が不足している種
LP 絶滅のおそれのある地域個体群 (Threatened Local Population)
地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの
2014-05-09 20:51
nice!(124)
コメント(24)
トラックバック(3)
金蘭ですか、初めて知りました。
自然の花はそっと眺めるだけにして欲しいですね(笑)
by johncomeback (2014-05-09 07:29)
SORIさん、おはようございます。
キンラン、初めて見ました。清楚なお花ですね。
近所にあるのですか?
by PENGUIN (2014-05-09 07:34)
おはようございます!
キンラン・ギンラン 初めて知りました☆
楚々とした蘭ですね~(^^)
盗掘 こころが痛みます・・・
by ちゅんちゅんちゅん (2014-05-09 07:38)
johncomebackさん おはようございます。
黄色であまり目立たない可憐な花です。これだけの数が咲いた場所は初めてでした。
by SORI (2014-05-09 07:48)
PENGUINさん おはようございます。
今回の場所は車で遠い場所なのですが、家から歩いて数分の雑木林の中でもキンランを見ることが出来ます。ギンランも見ることが出来ます。その時の記事が下記です。
キンラン
http://makkurokurosk.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13-17
ギンラン
http://makkurokurosk.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13-12
by SORI (2014-05-09 07:52)
ちゅんちゅんちゅんさん おはようございます。
知らないで採っていく人もいると思いますが、そのために急速に数が減ってしまったようです。この蘭は育てるのが難しいので、自生地で見てもらいたいものです。
by SORI (2014-05-09 07:55)
キンランとギンラン、初めて知りましたが
キンランの花、可愛いですね。
が、やっぱり盗掘されてしまうんですね。
残念でなりません。
by poko (2014-05-09 10:41)
pokoさん おはようございます。
幸いにもキンランはクマガイソウほどには知名度はないためか業者ではなくマニアだけのようで盗掘は道沿いの場所が多いように見受けられました。
おかげで、写真で紹介したように現時点において沢山のキンランを見ることが出来ました。
by SORI (2014-05-09 10:51)
キンランというのは知りませんでした。
でも山野草の盗掘は絶滅してしまうので
止めて欲しいですよね。
エビネも自然の花は素朴できれいです。
by yoko-minato (2014-05-09 12:06)
yoko-minatoさん こんにちは
エビネは地域によって色合いが違うようです。このエビネは色が濃いのが特徴のようです。絶滅しないにしても限られた場所だけで見れるのではなく、身近な自然の中で見れるようになってほしいです。
by SORI (2014-05-09 12:42)
特定の条件がそろって始めて生育する種は
なかなか見れなかったりと貴重ですね。
知らないと摘んじゃいそうで怖いです^^;
by 昆野誠吾 (2014-05-09 15:26)
昆野誠吾さん こんにちは
これほど立派なキンランが沢山生育している場所は初めて見ました。それだけでも貴重な存在の場所だと思います。
by SORI (2014-05-09 15:45)
希少な植物がたくさんある森ですね。
大切に環境を守りたいですね(*^^*)
そしてドクダミはどこにでも生えますね(*_*)
by ryang (2014-05-09 17:08)
ryangさん こんにちは
我が家もドクダミが繁殖するので、草抜き(ドクダミ抜き)が大変です。いくら抜いても完全に根が抜けないのでドクダミと根気比べです。
by SORI (2014-05-09 17:33)
こんばんは~
キンランは隣の区の公園でポツポツと咲いているのを見た事があります。
盗掘する人の気持ちって分からない。そんな方は何処かでも同じ事を
しているのでしょうね。
by puripuri (2014-05-09 21:51)
こんばんは。
貴重な草花の写真を拝見させていただき、ありがとうございます。
どれも初めて知りました。後世に残していきたいですね。
by hasseyおやじ (2014-05-09 23:14)
puripuriさん おはようございます。
可憐な貴重な花なので、いつまでも身近な場所で見ることが出来るといいですね。貴重な自然を大切にする気持ちが大切だと思います。
by SORI (2014-05-10 05:59)
hasseyおやじさん おはようございます。
掲載することで知っていただけてよかったです。こちらこそ見ていてでいてありがとうございます。
by SORI (2014-05-10 06:01)
SORIさん、おはようございます。
貴重な花がたくさん咲いて、素敵な森ですね!
私も、こんな森を散策してみたいです。
by ゲンママ (2014-05-10 06:43)
ゲンママさん おはようございます。
ワンコを連れてこられている方も多かったです。ムサシも喜んで長時間散歩をいたしました。ただし、このような自然の中に行くときはダニ対策をしておく必要があります。
野草のことが判っておられる方ほど貴重な森であることが判ってもらえると思います。
by SORI (2014-05-10 06:48)
あれ?
昨夜コメント書いたつもりだったけど、
送信ボタン押さなかったのかな??
キンラン、遠目にはランと思わないけど近づくと、
確かにラン系ですね。。
おまけに、ギンランがあるとは。。。
銀蘭は花が小さいですね。。
そしてドウランは、あるのか?
探してみましたが、
ドウランツツジしか見当たりませんね。(^▽^)
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2014-05-10 08:56)
なんだかなぁ〜!! 横 濱男さん こんにちは
昨日はアクセスがうまくいかない時間帯がありました。何度も入力をやり直したのを思い出しました。
2度もコメントを書いていただいたようでありがとうございます。いろんな花が咲いていました。暗い場所が多いので、それに適した花が多いようで貴重な場所です。
by SORI (2014-05-10 12:15)
この森、とてもいい場所ですね。この状態をずっと残してと思いますね。ウラシマソウとマムシ草は形が似ていますね。キンランもとてもキレイです。珍しい花がいっぱいですね。
by youzi (2014-05-13 08:26)
youziさん おはようございます。
これだけ貴重な植物があるところは少なくなったのではないでしょうか。増して、あまり知られていないところなので驚きました。
by SORI (2014-05-13 10:28)